AIは人の働き方をどう変えるか?未来の働き方を考察
AI(人工知能)に関する動きは加速し、各メディアでAI関連のニュースを見ない日はありません。AIが話題に上がるようになる前、AIは多くの人にとって遠い存在でした。しかし、2022年11月にChatGPTが誕生して以降、ビジネスでの活用という側面でよりAIが注目されるようになりました。今や多くの人にとって「AIの活用」というのは大きなテーマであり、AIと末永く仲良く幸せに過ごしていくためには、どのように関わっていけばいいのでしょうか。今回は、AIが与える影響について、私たちの「働き方」にフォーカスして考察していきます。
更新日:2024年8月1日
- 【目次】
- 各業界で広がるAIの活用
- AIによって変わる私たちの働き方
- AIは雇用を奪うのか?新しい仕事が生まれる可能性も
- AIは「総フリーランス社会」を生み出す可能性もある
- AIは人類と対峙するものではない
各業界で広がるAIの活用
まずは、私たちの身近なところでAIがいかに活用されているか考えてみましょう。例えば、音声アシスタントも活用事例として挙げられます。iPhoneに導入されている音声アシスタントシステムのSiriもAIの技術が活用されているものの1つです。また、Amazonが提供しているAlexa(アレクサ)にもAIが導入されています。今までのAlexaは単に音声を認識するシステムに過ぎませんでした。しかし、2023年9月にAmazonはAlexaに生成AIの技術を取り入れることを発表。まるで本物の人間と会話しているような自然なやり取りが可能になってきています。
このように見ると、AIはIT分野で活用されているという印象を持つ方も多いかもしれません。しかし、今やAIはその他のさまざまな業界で活用されているのです。
自動車産業のAI活用事例
自動車産業に目を向けてみます。現在、自動車産業では完全自動運転を実現するべく、さまざまな実証実験を行うなどして開発を進めています。完全自動運転を実現するためには、AIの技術は必須です。道路標識や信号の認識、運転における判断や予測など、あらゆる側面でAIの力が必要になります。今はこれらの情報をAIが学習している段階ですが、近い将来に「仕事の作業をしながら自動運転で目的地まで向かう」ということも実現できるかもしれません。
製造業のAI活用事例
AIは製造業においても活用されています。特に、生産管理において、AIを用いたツールが導入されているのです。製造業においては効率的に製品を製造するため、原料の調達から製造、出荷までの工程を管理する製造管理が肝となってきます。工程のなかでは特定の作業員に負荷が集中しないよう業務を平準化したり、原料のロスをできる限り抑えたりする必要があるのです。製造管理を人の手でチェックしていくと、それだけ手間もかかりますし、ミスも増えるでしょう。その部分をAIが担うことで、業務の効率化に結び付いています。
飲食業のAI活用事例
飲食産業にも目を向けてみましょう。飲食の現場でもAIは活用されています。飲食店を予約する場合はネットを通じて行えますが、急にキャンセルをしなければならない際は電話でお店に伝えることになります。しかし、店側からすれば忙しい時間帯だと電話対応も大きな負担となるでしょう。そこで、AIが電話対応をする「AIスタッフ」という技術が活用されています。電話の相手の音声を認識し、予約のキャンセルや変更の連絡について自動で対応できるのです。
AIは雇用を奪うのか?新しい仕事が生まれる可能性も
これまで見てきたように、AIはさまざまな人の業務を効率化させる可能性を秘めています。一方で、懸念点として挙げられるのが「AIの出現によって雇用が奪われる」という問題です。
アメリカの大手金融機関であるゴールドマン・サックスが2023年3月に発表した調査によると、アメリカの雇用の約3分の2がAIによって自動化されるとのこと。結果、AIが最大3億人の雇用に影響を及ぼすとしています。実際にアメリカでは金融やITの分野でAI導入を利用にしたリストラが発生しており、その流れは日本にもいつかやってくる可能性があります。
このようなニュースに接していると、AIは人類にとって大きな敵のように思われるかもしれません。しかし、AIがこれまでになかった職種を生む可能性も指摘されています。例えば、AIに関するエンジニアはその一つとして挙げられるでしょう。実際に「AIプロンプトエンジニア」という職種も生まれています。AIプロンプトエンジニアの仕事はChatGPTなどのチャットボットに指示文(プロンプト)を伝え、成果物のクオリティを調査し改善していくのが役割です。
しかしながら、AIは1の物事を100まで発展させるのは得意ですが、0から1を生み出すのは苦手だといえます。では、誰が0から1を生み出すのかといえば、私たち人間です。AIはあくまで人が使うもの。そのような認識でいれば、AIも脅威には映らなくなるのではないのでしょうか。
ここで忘れてはならないのは、AIが生成したものは誤情報が含まれているということです。本当にAIが作ったものが正しい情報なのか?それを見極めるのが、私たち人間です。今後は、そのような見極めを行う職種も一般的になっていくかもしれません。
AIは「総フリーランス社会」を生み出す可能性もある
これまで見てきたように、AIは私たちの働き方を大きく変えつつあります。働き方が変わることで変化していきそうなのが、雇用する会社側と雇用される社員の関係性です。
AIはパターンが決まった単純作業の部分を人に変わって担うようになってきます。一方で、新しいアイデアを創出するのは人の仕事です。また、現場にいないとできないような事務作業や受付業務についてもAIで済むようになると考えられます。結果、人間にはよりクリエイティブな成果が求められるようになり、より場所を問わず働けるようになるのです。これからは「何を生み出せるのか」という個人的なスキルが働く上で重要になってくるでしょう。
AIが生まれるまでの世の中では、「総合力」が一般的に求められるビジネススキルでした。企業で働く上では、何でもできたほうが担える仕事の幅が広がるためです。しかし、多くのこれまでの業務はAIが担うようになります。その結果、得意分野を磨き、自分のスキルを磨く必要が生まれるのです。
AIが一部の業務を担うことで、企業側にとっても雇用数を抑えられるようになります。すなわち、企業に在籍している社員の数が減っていくということです。そのような流れが生まれることで、フリーランスとして仕事をする人も増える可能性があるでしょう。企業が人を雇用するという時代は変わり、「自分の得意分野に関するスキルを企業側に売る」という新しい未来が生まれる可能性もあるのです。いわば「総フリーランス時代」の到来も近いといえます。「サラリーマン」という言葉は、いつかなくなってしまうかもしれませんね。
では、総フリーランス時代に求められる私たちの在り方とは何でしょうか。いくらスキルが求められるといっても、高いスキルさえ持っていればそれで良いのかというとそうではありません。コミュニケーション能力というのは、AIが普及した時代にも重要になってくると考えられます。今の時代でもSNSなどで手軽にコミュニケーションが取れるようになっていますが、だからこそ顔と顔を合わせたコミュニケーションはより重要になっています。AIが一般化し、何もかもが効率的になる時代だからこそ、細かいコミュニケーションはより求められるようになるといえるのではないのでしょうか。
AIの活用が進むことで、人間独自の考え方やコミュニケーションのあり方が見直されることが予想されます。自動化が進むことで、人肌の温かさがより求められるようになるのです。AIの時代だからこそ、個人のスキルだけでなく人間力もさらに見定められることになるかもしれませんね。
AIは人類と対峙するものではない
ここまでAIによる働き方の変化について見てきました。AIは各業界で活用が広がっており、全く関係がないという人はいなくなるでしょう。今でこそ、AIは注目される存在ですが、近い将来意識せずともAIと関わっているのが、あたりまえとなっているでしょう。
AIは確かに一部の雇用を奪う可能性があります。しかし、決して人類と対峙するものではありません。AIを生み出したのは人間であり、また活用するのも人間です。人間が得意なことは人間に、AIが得意なことはAIに任せるという棲み分けが重要になってくるのです。AIとともに、より豊かな社会を作っていくという考え方を私たち1人ひとりが持つ必要があるといえます。
さて、AIによって私たちが働く場所であるオフィスはどのように変化していくのでしょうか。次回の記事では「AIと会議」をテーマに、私たちの働く環境に注目していきたいと思います。